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建物の需要と寿命

Photo  昨日、阿倍野区某所で、りっぱな住宅が解体されようとしている現場に出くわしました。以前から売りに出されていた中古住宅です。1年以上、買い手が見つからず、不動産業者や地域では有名物件でした。最近、その家が売却されたとの話は聞いていましたが、まさか解体されて建売住宅が建築されるとは思いも寄りませんでした。

 この家は平成3年の建築で、お医者さんがご自宅として住んでおられました。建てた頃から想像すると、良い材料を使い、室内も贅沢な空間であったと想像します。その家がたった19年で取り壊されるとは…。取り壊す不動産業者やそこへ売却した所有者に何の罪もありません。これはすべて建物の需要の問題です。

 この家の敷地は60坪強あります。現在でも数は少なくなりましたが、これくらいの敷地の住宅用地をお探しの方は確かにいらっしゃいます。しかし、探しておられるのは「住宅用地」であって「住宅」を探しておられる方は皆無です。「住宅」は新築・中古住宅を問いません。皆さん、土地を探しておられます。

 不動産業者が建売住宅用地として購入するということは、この家の最終売却価格は近隣の土地相場、もしくは解体するためのコストを差し引いた土地相場以下の価格になった可能性が高いと思います。つまり建物価格は0(ゼロ)。この建物をタダで差し上げますから、と言っても誰も見向きもしなかったことになります。

 政府は中古住宅の流通促進を図るために今後、様々な施策を打ち出してくるようです。しかし、国民の新築願望はそう簡単には覆すことができそうもありません。たった19年しか経過していない住宅を取り壊すということは、経済的にも大きな損失ですし、資源や環境面を考えてもマイナス要素が大きいと思います。(もっともそれによって新たに住宅資材が売れるという経済効果はありますが)

 何かの本で読んだことがありますが、日本人には「けがれ」の文化や、「無垢」(むく)への信仰のようなものが 根底にあるとありました。代表的なものが20年に一度建て替えられる伊勢神宮の式年遷宮です。詳しいことは忘れましたが、古びたものには「けがれ」が生じるというような考えなのでしょうか?(私が間違った理解をしている可能性大)。

 しかしそのような日本人の精神構造とはまた異なる側面も最近は大きくなってきました。それは当社が再生のお手伝いしている長屋や町家などの古い建物を好む人が増えてきています。また、それを所有しておられる人の中にも、少しずつですが、親から譲り受けた家や建物を大切に使い続けたい、というような気運もでてきました。経済的に苦しい若い世代が、ファッションとして低コストのライフスタイルに目を向けだしているという側面も否定できませんが、私の感覚では一時の流行という雰囲気は感じていません。

 ちょうど先日の日曜日にも、ご両親が相次いで亡くなってしまい空き家になった家の活用についてご相談をいただきました。多くの費用をかけて改装するよりも、家賃が安くても仕方がないので、自分で手を加えながら上手に暮らしていただける方に住んでもらいたいという意向です。同じ地域の中で同時並行して起きている現象。築後19年の鉄骨の家を取り壊して建売住宅を建築することと、古い家をそのまま維持して活用していくこと。多様化するライフスタイルと簡単には言えない、時代のうねりのようなものを感じます。

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